概要

FICPI JAPAN 2023年度会長挨拶

2023年6月のFICPI-JAPAN臨時理事会において、国際弁理士連盟・日本協会(FICPI-JAPAN)の2023年度の会長を仰せつかりました杉村憲司でございます。ここに、改めて就任のご挨拶を申し上げます。

まず、FICPI (国際弁理士連盟)およびFICPI-JAPAN(国際弁理士連盟・日本協会)について簡単にご説明申し上げます。FICPI(国際弁理士連盟)は特許及び知財法律事務所所属弁理士・弁護士から構成される世界規模の士業団体です。発足はヨーロッパで、1906年に遡ります。以来世界各国からのメンバーが参加し、現在は約5000名以上の会員を擁しております。

連盟参加国には、「協会(Association)」組織による国が14カ国、「部会(Section)」組織による国が23カ国あります。この他に個人会員のみをメンバーとする国も含め、全80カ国以上の国・地域により構成されています。
FICPIは世界各国において毎年積極的にフォーラムや、シンポジウムなどを開催し、世界の知財分野の動きをリードする有力な団体の1つとして意欲的に活動しております。AIPPI, APAAなどの国際団体、AIPLAなどの各国団体とも密接に協力しております。

2022年12月には、2020年11月にオンラインにて行われてから約2年ぶりにFICPI本部と日本特許庁国際政策課が注目する最新の知財情報の意見交換会であるAsian Tourをオンラインにて行いました。

2023年7月には東京大学にて行われた、ATRIP Congress 2023 in Tokyoにスポンサーとして参画しました。世界各地の大学で教鞭を取る若手の学者達が応募した50通の知財研究論文の中から選ばれた最優秀賞受賞者へ、FICPI Young Scholar’s Prizeを授与いたしました。

FICPI-JAPANは、その会則が規定する目的達成のために、常に組織の強化、会員の増強を図っております。これにより世界の知財業界におけるFICPIの日本における活動と貢献を高め、日本および世界各地域の弁理士との連携、交流を積極的に推進するよう活動しております。

またFICPIおよびFICPI-JAPANは、弁理士にむけた研修を積極的に行い、日本弁理士会の継続研修の外部機関としての認定を受けております。2020年からの3年間はコロナ禍により十分な活動が行えませんでしたが、今後はこれまで行っていたようにFICPIおよびFICPI-JAPANとして特色ある国際的な知財情報を発信する研修を企画してまいります。継続研修には、FICPI 会員でない弁理士の方も受講できますので、是非ご参加ください。我々役員一同はFICPI-JAPANが一層積極的に活動し、加えて多くの弁理士の方が参加しやすい研修及びシンポジウムを行うために努力してまいります。弁理士そして知財系弁護士の先生方の一層のご理解とご支援を今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

最後になりますが、私どもFICPIおよびFICPI-JAPANの性格、活動内容を理解して頂き、私どもと一緒に活動して頂き度く、日本弁理士会所属の多くの弁理士の方々のFICPIへの入会をお待ちしております。

FICPIの活動

1.FICPI
FICPIは、1906年に設立された事務所弁理士として知的財産を扱う弁理士により構成された国際団体である。
当初は比較的狭いヨーロッパの地域からスタートし、発展を続け、その後会員数も増加をたどり、現在は世界的な規模となり、会員数は、86ヶ国、約5000人に至っている。2006年には、FICPI創立100周年記念総会をパリにおいて開催した。
FICPIの名前は、フランス語、Federation Internationale des Conseils en Propriete Industrielle の頭文字をとった略称である。
日本に関しては、Japanese Association of FICPIの歴史は、1976年(昭和51年)に開催のヘルシンキの会合に、杉村興作先生が初めてオブザーバーとして参加し、翌1977年(昭和52年)に開催のアルゼンチンのブエノスアイレスの執行委員会に杉村暁秀先生(故人)、浅村皓先生が参加して、Japanese Association of FICPIの設立が正式に承認された。
以来Japanese Association of FICPI (FICPI日本部会)として参加、活動し、1984年(昭和59年)10月には、東京において、執行委員会を開催し、また1993年(平成5年)には、新潟において、APAAとFICPIとの共催でセミナーを開催し、450名が参加している。
さらにFICPIは、APAAと共催で、2000年にインドのニューデリー、2002年アメリカのニューポートビーチにおいて、ジョイントセミナーを開催している。
2008年12月には、FICPI JAPAN シンポジュムを日本弁理士会の協力のもとに、日本特許庁の後援を得て、横浜で開催し、33カ国から略400人が参加した。
2007年(平成19年)2月14日、総会、理事会を開催して、「国際弁理士連盟日本協会」規約を採択し、その名称を「国際弁理士連盟日本協会」(FICPI・JAPAN)として動き出した。現在会員数は、120名弱である。

2.Membership
会員になる入会手続は、各国、National Association或いはNational Sectionとして認められている国によって異なる。
その他の国の個人は、直接FICPI本部に入会申請書(Application Form)を提出して、入会委員会で審査の上、最終的には執行委員会で承認されて、会員となる。
日本に関しては、National Associationであるので、入会を希望する者は、国際弁理士連盟日本協会会長宛に入会申請書を提出し、日本協会理事会において、入会の可否が決定される。

3.FICPIの目的
FICPIの目的を要約すると,
(1) 弁理士業務の枠内に於ける国際協力を強化し、情報の交換を促進するとともに、会員同士の業務を調和し、促進すること。
(2) 会員の品位(Dignity)及び国際的規模での弁理士の業務基準(Standards)を維持すること。
(3)新しく提案される条約及び各国の法改正について、特に知的財産権の保護の制度及び弁理士のポジションの維持と活性化に関連して、意見を表明すること。
(4)IP分野における会員及び関心のある者の研修、継続的な教育を促進すること。
等が揚げられる。

4.組織及び活動
FICPIは、本部事務局、執行委員会によって管理、運営されている。
執行委員会(Executive Committee)は、各国から選出された1名の執行委員、1名の副執行委員、ただし投票権は、1票よりなる執行機関である。事務局(Bureau)は、3年毎に執行委員会で選出され、FICPIの日常業務の管理、運営を掌っている。
会長が議長を務め、副会長、事務局長、会計長、副事務局長により構成されている。総会は、3年に1度開催され、執行委員会は、年に1~2度開催され、重要問題を検討し、決定し、決議を採択している。
会長等の役員の任期は、3年で、総会毎に選出される。次回の総会は、2012年に開催される予定である。現在の会長は、Mr. Peter Huntsman (Australia)である。
委員会として、以下のものが置かれている。
・Admission Commission:個人会員の入会の審査、National Sectionからの新規加入会員の執行委員会への申請事務を行う。
・Contact Commission:FICPIが十分に組織されていない国の会員候補者とコンタクトすると共に、Association或いはSectionの設立を促進する活動を行う。
・Deontology Commission: 連盟としての職業行動規範及び規則についての検討を行う。
・CET(Study & Work) Commission (Commission d’ Etude et Travail) :テーマ毎にGroup1~10を置いている。
総勢100名の会員が参加しており、委員メンバーは、総会、FORUMの開催時には会合を持つが、常時は、メール等を通じて活動している。
Group 1: 国際商標、マドリッド協定
Group 2: 意匠、著作権
Group 3: 国際特許問題(ハーモナイゼーション、PCT等)
Group 4: 欧州特許問題
Group 5: ライフサイエンス及び化学
Group 6: 訴訟、権利行使
Group 7: ソフトウエア
Group 8: 伝統的知識
Group 9: 欧州商標
Group 10: IP Asset Management :ライセンス、技術移転、IP保険など
・EUCOF (European Union Members Commission of FICPI) :特にヨーロッパの問題について検討を行う。
・FAB (Finance Advisory Board): 連盟の財政の問題について検討を行う。
・Statutes Commission:連盟の規約及び規則が急速に変化する業務のニーズに適応できるように見直し、検討を行う。
・COM:Communication, Publication, FICPI Information を扱う。
・DOC:ドキュメンテーション一般を扱う。
・TASC:WTOとの関連問題等を検討する。
・TEC: 研修、継続的な教育を扱う。
上記のようなFICPI各委員会において、国際的レベル、各国レベルでの法改正の急速な進展に対応して、知的財産制度の特にユーザの立場からの意見が反映されるように活動している。
特にCETにおいては、問題を提起し、検討し、必要な場合には、各国にQuetionnaireを出すこととしている。
FICPIは、WIPOとは定期的に会合を持つとともに、WIPO主催のPLT,PCTなどの会議には、国際関係団体の一員として、常時代表を派遣し、重要なポジションを担っている。
さらにEPO及び米国、日本などの各国特許庁とも会長以下本部役員は会合を持っている。
私も出席していますが、米国特許庁長官との会合では、特許制度調和(Bプラス会合)、特許制度改正の現状、継続出願関連の規則改正、KSR以後の非自明性についての審査、審査の質、コンパクトプロセキューション、PCT関連事項(補助サーチ) Post-grant review制度等について議論している。
日本特許庁とは、私も出席していますが、1994年10月、1998年6月、1999年7月、2002年4月、2004年10月、2007年9月、2008年12月及び2009年12月に会合を持っている。
昨年12月の日本特許庁との会合では、最近の制度改正、特許制度調和の展開、PCTの新提案、滞貨問題、相互利用(特許審査ハイウエイ(PPH))、開発途上国への支援プログラム等について議論した。

5.FICPIと日本弁理士会との会合
上記のように本部会長等役員等が日本特許庁を訪問の際には、機会を得て、講演会、意見交換会、歓迎会などを開催している。
そして、従前より日本弁理士会と会合を持っている。
特に1999年(平成11年)弁理士制度100周年記念会合には、FICPI会長が招かれ、座談会に出席し、決議にも賛同している。
この会合がきっかけで、FICPIの協力で、FICPI会合の機会を活用して、下記のようにメルボルン(2001年)、ローマ(2001年)、の日本弁理士会主催のIP専門家会合が開催されている。
IP専門家会合(平成13年3月25日)には、ACPAA(中国弁理士会), AIPLA,CIPA(英国弁理士会)、CNCPI(フランス弁理士会)、IPTA(オーストラリア弁理士会),IPIC,KPAA,NZIPA, Patentantskmmer),APAA,AIPPI,FICPI,CNCPI,米国知的財産弁護士会が参加した。この会合は、Malcolm Royal FICPI会長(故人)の事務所の会議室をお借りし、昼食は氏の所属のヨットクラブハウスを提供して頂いた。
IP専門家会合(平成13年11月13日)には、FICPI FORUMの開催日の前日に開催し、ACPAA, AIPLA, ASPI,CIPA, CNCPI,IPTA,IPIC,KPAA,NZIPA Patentanwaltskamer, AIPPI,EPI,FICPIの参加を得ている。
メルボルンに続く会合であって、極めて和やかな雰囲気での有効な意見交換ができた。 又この間1994年10月には、新潟において、FICPI-APAAジョイントセミナーを開催した。
さらには日本知的財産学会年次総会における日本弁理士会のプログラムの実行に当たってもFICPIの協力を得てスピーカーを依頼している。
この他、1998年10月には、日本知的財産協会(JIPA)の要望により、FICPIが世話役となり、ウイーンにおいて、FICPI-JIPA-CIPA-CNIPAとの合同会合を開催した。
さらに2002年には、米国のニューポートビーチにおいて、FICPI-APAAのジョイントセミナーを開催した。
2004年10月21日の会合の際は、EUの進捗状況、SPLTへの対応、資格の相互承認関連問題、IDS問題、その他について議論した。

6.国際フォーラム、国際シンポジュウムの開催
パリ総会は、FICPI創立100周年記念総会でもあったため、フランス部会の肝入りで、特に盛大な会合となった。
会議のプログラムは、下記の通りであり、会議のメインテーマは、「Seeking balance for Intellectual Property」であり、フランスの国らしいテーマの選定であった。
私は、初日のモデレーターの役を承ったが、知的財産推進計画において知財立国を目指している日本にとって、基本理念について、多少納得し難いテーマではあった。
幸いスウエーデンの教授によるユーモアを交えたユニークなプレゼンテーションと、WTOの局長による今後の展望を含むプレゼンテーションにより、この点についての将来への問題の提起には役立ったようであった。各セッションのテーマは、以下の通りであった。
・Balancing patents with economic development
・Balancing fair protection of inventions with a reasonable degree of certainty to third parties.
・Balancing fair protection on shapes and needs of third parties for their free use
・Balancing privacy law with IP laws
・Balancing IP rights with public policy
・Balancing fair protection for trademarks with the necessity for their fair use by third parties
・Balancing the activities of national and supra-national offices
・Balancing the interests of all participants in the patent system
ソーシャルイベントとして、ルーヴル美術館でのデイナー、セーム川のクルーズ、加えてヴェルサイユ宮殿での晩餐会は、FICPI創立100周年総会に花を添え、次世紀へのスタートとなった。
総会の開催されない年には、FORUM或いはSymposiumを各地で開催している。
このFORUMには、FICPI会員のみならずIPに関心のある全ての者に参加を呼びかけている。
通常のプログラムは、最初の2日間は、9:00から17:30まで、特許コース、商標コース、知的財産一般コースの3コースを並列的に進行し、3日目は、Tourに当てている。
これまでにバルセローナ、ベルリン、フローレンス、モンテカルロ、ローマ、プラハ、リスボン、ヴェニス、北京、セビリヤ、フローレンス等で開催され、2008年12月4,5日には、JPAAと共催で横浜で「2008 FICPI Japan Symposium」を開催し、33カ国から、凡そ400人の参加を得ている。プログラムは以下の通りであった。
セッション1:最近の動向 特許庁
       最近の動向 知的財産高等裁判所
セッション2:発明の進歩性 (アジア)
セッション3:発明の進歩性、非自明性(アメリカ、ヨーロッパ)
セッション4:権利の回復
セッション5:特許権の権利行使の比較 (日本、アメリカ)
セッション6:新しい商標の保護の動向
セッション7:JPAA活動の新展開、FICPIの積極的活動
各セッションのテーマ毎のモデレーター、プレゼンターには、各国の専門家が担当することになっており、日本からは、特許庁長官、特許技監、知的財産高裁所所長、判事のご講演を賜り、さらに日本会員もモデレーター、プレゼンターを担当した。

7.過去に採択された主な決議(Resolutions)
総会、執行委員会においては、その時点での重要課題について、検討、審議し、決議を採択して、各国特許庁等政府機関、国際政府間機関等に働き掛けを行っている。2000年以降、80余の決議を採択しているが、主なものは、以下の通りである。
(1) Privilege
(2) Uniform Procedure for Patent Enforcement
(3) Official Surplus
(4) Maintaining the Quality of Patent Office Work
(5) Business Method
(6) Simplification of Guidelines in Patent Grant Procedures
(7) Harmonization not Centralization
(8) Proposal on Disclosure Requirements Relating to Genetic Material Resources
(9) Compulsory Licensing of Pharmaceutical Patents for Export to Countries with Public Health
(10) Quality of Patents
(11) Fair Use of Trademarks
(12) Prior User Rights and a Novelty Grace Period
(13) Recognizing the Unique Skills of the Patent Attorney Profession
(14) IP Information Services and Helpdesk
(15) Divisional Patent Application
(16) Grace Period (Declaration)
(17) Inventive Step at the European Patent Office
(18) IP Advisor/ Client Privilege
(19) Deferred Examination
(20) Reduced Fee Regimes (Small Entity Fees)

8.国際弁理士連盟日本協会(FICPI・JAPAN)
上記したように、2007年(平成19年)2月14日 総会、理事会を開催して、日本協会規約を採択し、その名称を「国際弁理士連盟日本協会」(FICPI・JAPAN)として、動き出すこととなった。
規約において、目的、事業について、次のように規定している。

(目 的)
第3条 本会は、FICPI( Federation Internationale des Conseils en Propriete Industrielle )において、日本を代表する。
本会は、FICPIの目的に則り、諸外国における弁理士業務を行う同業者との間の親睦を図り、国際的連携を強化し、その交流を通じて, 知的財産権の一層の保護、活用に努め、併せて弁理士業務に関する諸問題の適切な運用と改善を追求することを目的とする。

(事  業)
第4条 本会はその目的を達成するため、次の事業を行う。
一 FICPIと密接に連絡し、FICPIの諸会合に参加し、その事業に協力すること。
二 会員の会合を開催すること。
三 知的財産権に関する事項について、内外の政府機関、政府間機関及び知的財産権保護に関する各種民間機関及び関係団体との密接な連携を図ること及びこれらが開催する会議へ参加すること。
四 知的財産権に関する情報の交換をすること。
五 知的財産権に関する国際法規及び国内法規の改善並びに調整を図るための調査、検討、立案、提案をすること。
六 弁理士業務に関する諸問題の適切な運用と改善を検討すること。
七 その他、本会の目的を達成するために必要な事業をすること。
今後この趣旨で活動して行くことになる。

FICPI JAPANの組織としては、総会、理事会を置き、理事会は、定例として、月1回開催し、会の運営、管理、入会審査を行っている。
また日本協会の委員会として、特許委員会、商標委員会及び企画調査委員会を置いて、関連する問題について検討し、意見などを提出している。
先般は、パリ条約第4条の問題、代理人の問題について回答している。
本会への入会については、FICPI・JAPAN会長宛の入会申請書を事務局宛に郵送して頂きますようお願い致します。
入会の申請に当たっては、3人の日本協会会員の推薦を必要としている。詳細手続については、FICPI JAPANのホームページの必要項目へのアクセスをお願い致します。或いはFICPI JAPAN事務局長 杉村憲司にお問合わせをお願い致します。
本年FICPI JAPANは、日本弁理士会の継続研修に関する外部機関の認定を受けましたので、セミナーなど研修事業を積極的に活動する予定である。